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David Bowieデヴィッド・ボウイ /ヒーローズ

ベルリンでのブライアン・イーノとの共作2作目のアルバム。
前半に軽さがあったロウよりもさらに暗く陰鬱で重厚なサウンドイメージに。

ブライアン・イーノはプロデュースでクレジット表記されていないが、クラフトワークの影響と共にサウンド重要な鍵を握る。

タイトル曲『ヒーローズ』は発表時からライブのレパートリーから外される事はなかったデヴィッド・ボウイのキャリア中でも重要曲で本人の一番のお気に入りの曲。

ヒーローズヒーローズ
デヴィッド・ボウイ

曲名リスト
1. Beauty and the Beast
2. Joe the Lion
3. Heroes
4. Sons of the Silent Age
5. Blackout
6. V-2 Schneider
7. Sense of Doubt
8. Moss Garden
9. Neuköln
10. Secret Life of Arabia

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ヒーローズは前作ロウ の流れを受けつつレコーディングはドイツのハンザスタジオで行なわれた。

ロウ、ヒーローズのベルリン時代のデヴィッド・ボウイの一番の魅力は「狂気」を感じさせながら決してそちら側へは行かずギリギリの所で踏みとどまるバランス感覚だったのでないだろうか。

不安定な音楽的な実験をしながらボウイ自身には確信があって迷いがないから安定した状態で実験をすることができたように思える。

日本人カメラマン鋤田正義によるこの不思議なポーズのモノクロのジャケットは見事にアルバムの内容を表している。

漫画家の荒木飛呂彦氏もマネをしたこのポーズ(ジョジョの奇妙な冒険と洋楽ロック)について鋤田氏はこう語っている。

「結論から言うと謎のまま。僕より本人が一番わかっていると思う。僕はポーズをこぼさないようにどんどん撮っていくのが精いっぱいのフォトセッションで、ポートレイトの難しさと面白さを感じた。彼自体が表現したいことがあふれていた」



その後、このポーズは、デヴィッド・ボウイの大回顧展〈DAVID BOWIE is〉に行った事でドイツ表現主義の代表的画家 エーリッヒ ・ヘッケルの『Roquairol』を真似たポーズである事が分かった。

ヘッケルは版画も得意としており、白と黒の強いコントラストのジャケットのイメージもおそらくそこから来ているのだろう。

また社会の矛盾や革命、戦争をテーマを作品を制作していたのは、『ヒーローズ』のテーマとも一致する。


曲調は鮮やかなオレンジ色のジャケットのロウの前半のようなカラフルでポップな曲はなくシリアスで精神世界的なグレイなサウンドが続く。


オープニングの『美女と野獣』での今までのボウイになかった硬質で金属的なサウンドに驚かされる。

『ライオンのジョー』ではギリギリの狂気を思わせるシャウト。
ここまでとてもスピード感があるのはこのアルバムはほとんどがファーストテイクだという事とロウには参加していなかったキング・クリムゾンのロバート・フリップのギターによるところが大きい。

『今ベルリンにいるんだけど激しいヤツ弾ける?』フリップは、ボウイにそう電話で突然誘われたと語っている。

前衛的でありながら生真面目に正確なリズムを刻むフリップのギターはドイツの空気感とマッチして相乗効果を生んでいる。

さぞかし緊張感に包まれたレコーディングだったのかと想像しがちだが、ボウイによるとそうでもなかったらしい。


ブライアンと一緒にいる時はたいてい冗談を言って過ごす。
笑い過ぎて床に転げ落ちてしまうほどだ。
レコーディングのあいだ中、1時間のうち40分は涙をこぼして笑っていたと思うよ。
フリップがまた、とてつもなくおかしいんだ。
信じがたきユーモア感覚だよ。あのふたりがスタジオにいると、思いつきのユーモアがやたらに飛び出してくる。



タイトル曲『ヒーローズ』は暗く無機質で金属的なサウンドのインストが多いアルバムの中で「詞のメッセージ」に重点を置かれた異質の曲で、この曲の存在によって「詞のメッセージ」を拒否していた『ロウ』とは違いを感じる事ができる。

今はなき東西のドイツを分断していたベルリンの壁で落ち合うカップルをヒントにできたと言う逸話は、実はプロデューサーのトニー・ヴィスコンティと歌手のアントニア・マースがスタジオの窓の外で抱き合っていた場面をヒントにしたものだった。

誰でも1日だけならヒーローになれる


というシンプルで刹那的なメッセージのこの曲はイタリア語、ドイツ語バージョンでも録音された。

とてもシンプルな構成でゆったりとしたAメロで始まりサビがそのAメロを1オクターブ高くなるという日本のロックやポップス曲ではあまりない展開。

ヴォーカルがエコーの効いた迫力あるサウンド作りはプロデューサーのトニー・ヴィスコンティのアイディアで3つのマイクを用意して一番手前のマイクは小さくささやくような声用、二番目に離したマイクは普通の声量で唄う用、三番目の一番離れたマイクはシャウト用と分けている。

曲の最後のシャウトの時は押さえ気味で唄っていた時に反応したかった一番離れたマイクまですべて音を拾い独特の広がりと迫力のサウンドとなる。

ボウイの曲と声にイーノによるエコーを効果的に使った音処理、フリップのイマジネイションあふれるギターにより代表曲となったがライブでは定番の最後の盛り上がりのコーラスの場面ですぐにフェイドアウトしてしまうのが惜しい!

『沈黙の世代の子供たち』は今までのボウイの曲になかった中近東風の曲だがどこか宇宙的なサウンドになっているのがいかにもボウイらしい。

その後はひたすらインストが続くが一曲ごとに独立した曲ではなく現代音楽の組曲といった感じか。

後半の日本の庭園をイメージしたという東洋のヒーリングミュージック的な曲の『モス・ガーデン』ではボウイ自身による琴のプレイも聴ける。(かつて、いや今でも琴をプレイするロックスターがいただろうか?)

『ノイケルン 』はトルコ人が多く住むドイツの地名らしく中近東風のボウイのサックスの演奏が聴ける。

もう完全にポップアルバムとしては破綻していて一体どこに行くのだろうという所で『アラビアの神秘』でやっと強引にこっちの世界に引き戻される感じがする。

キュアーのロバート・スミスはボウイはロウを出した後に死ねば良かったんだと言ったがそれには全く同意出来ない。
一番の理由はもちろんこのアルバム「ヒーローズ」があるからだ。



Itunes試聴&ダウンロード

Heroes (Remastered) - デヴィッド・ボウイ





【アルバムデータ】
リリース
1977年

プロデュース
トニー・ヴィスコンティ デヴィッド・ボウイ

Next⇒ロジャー(1979年)

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David Bowie デヴィッド・ボウイ/ロウ


デヴィッド・ボウイ/ヒーローズ動画視聴



デヴィッド・ボウイ関連CD・DVD

Heroes



Sons of the Silent Age



Beauty and the Beast

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2 Comments

nasumayo  

そう言ってもらえるとうれしいです。
やっぱりジャケットも含めて作品だとあらためて思いました。

このポーズは鋤田氏が指定したのではなくボウイが何パターンか自分で考えて鋤田氏が撮影した数枚から選んだらしいです。
このジャケット写真がきっかけで鋤田氏の写真集も買ってしまいました。

2007/11/20 (Tue) 11:00 | EDIT | REPLY |   

ルドルフ  

私、このアルバム持っていません。
が、鋤田氏撮影のこのジャケットが大好きなんですよ。

nasumayoさんの解説を読んでいたら、メチャクチャ欲しくなりましたね、このアルバムが。「グレイなサウンド」、「金属的で無機質」というのが、ジャケットの感じと凄くリンクするような気がします。
できれば、アナログLPが欲しいな。

2007/11/19 (Mon) 22:15 | EDIT | REPLY |   

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  •  David Bowie「HEROS」
  • このアルバムを初めて聴いたのは、FMラジオ。 この頃はまだ、売れるアーチストの新
  • 2008.06.01 (Sun) 02:03 | Another Side of MANU.

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